15年にわたる恋心に終止符を打った。その15年の経緯を、俺の思い出づくりのために書いていく004

彼女が高校三年生から大学一年生までは、ほとんどコンタクトを取っていなかった。思い出さなかったわけではないが、彼氏と遊ぶなり学校生活なりが楽しいのだろう、声はかけないでおこう、と決めていたし、そのまま途切れるなら途切れるに任せよう、とも思っていた。その頃まで(ほんのり気になってはいたが)、彼女はにぎやかで、世界一可愛い妹だった。

ちょうど成人式があるころ、彼女からLINEが入った。内容は忘れたが、ひさしぶりのチャットは、相変わらず天真爛漫だったのだけは覚えている。

そこから……今度は縁は切れなかった。

彼女のことを完全に女性として意識したのは、詳しくは覚えないが、その頃のどこかからだったかと思う。

複雑なことに、好きな人になった彼女だが、それでも彼女は、優秀な人で、尊敬できる人で、妹で、頼れる友人でもあった。俺の中の彼女は、今でもそれを辞めたことは一度もない。俺が死ぬ時でも、彼女はそのままだろう。

この恋心を抑えることを、俺は血の誓いにした。

理由は、俺の目標が高すぎることで、彼女と一緒になったところで彼女を不幸にすること。よりにもよって、なぜ、世界でいちばん好きになった人を、地獄に連れて行かなくてはならない?

あとは、俺の年齢。けっこう年齢差があるのだ。これもまた彼女を不幸にする。その詳しい説明は最後の日に、当人に伝えた。のちのち、それを書こうと思う。

彼女のそばから立ち去るのは、彼女に運命の相手ができるまで、とその時に俺は決めていた。

俺は、彼女に振られるまでの間……それまでは彼女を助けようと決めた。15年かかるとは思わなかったが。

幸い、彼女の俺への認識は『パソコンに詳しい兄ちゃん』くらいだったらしい。最初から最後まで、それは変わらなかったようだ。

俺は彼女にLINEなどでチャットを自分から送ることはあっても、絶対に自分から通話はしなかった。するのが嫌いとか、怖いとかではない。彼女の貴重な時間を俺のために使わせないためだ。彼女が、俺と仲良くなる時間を減らすためだ。

ただし、彼女からの通話は喜んで出たし、一度たりとも、一瞬たりとも、彼女からのコンタクトを迷惑に思ったことはなかった。彼女の役に立てるのが、嬉しかった。どんな遊びよりも、どんなゲームよりも楽しかった。

付き合う気がないなら、離れればよかったのだ。冷たくすれば良かったのだ、電話がかかっても出ず、チャットも送らなければ良かったのだ……という反論もあろう。

じつはここにも理由があり、俺はそれを踏まえて、彼女とのツキアイを継続した。それはまた、どこかで語る。ただひとつだけ現時点で付け加えるとするなら……妹や友人に冷たくするとか、身の心配をしないとか、悩みにアドバイスをしないとか、そんなことはありえないことだ。ほっておくと失踪しそうなときもあったぞ? そもそも、この反論をおこなう人間は、人が目の前で悩んでおきながら、ほうっておくのか? 

また話がそれた。

誕生日は知っている。10/26だ。その頃には必ず思い出していた。だが俺は、絶対に彼女には誕生日プレゼントと、クリスマスプレゼントは送らなかった。彼女の友達は、彼女に必ず送っているそうだが。

そういう日以外は、俺も喜んで彼女にプレゼントを贈った。食べればなくなるもの、使えば消えるものがほとんどだ。あえてそうしていた。たまに衝動を抑えきれず、nintendo switchや、アレキサンドライト宝石のペンダントを送ったことならある。彼女の就職祝いには、安いものだがノートパソコンを進呈した。だが、送ったのはそのぐらいだ。

彼女もたくさんのものを送ってくれた。俺が紅茶が好きなのを彼女は知っているから、たびたび高級な紅茶を俺のために選んでくれた。彼女のチョイスはいつも最高だった。とくに多かったのはシンガポール・TWG社の紅茶。

絶品だったが、俺は必ず、その紅茶がなくなる少し前に、飲むのをやめていた。

この紅茶がなくなれば……彼女との縁が永遠に切れてしまいそうで怖かったから。

だが、彼女はまめに俺のことを思いだしてくれた。それは本当に嬉しかった。

誕生日プレゼントのことだが、本当は俺も送りたかった。

が、来たるべき別れの時、たくさんの誕生日プレゼントのなかに、この日を迎えた俺のプレゼントが、そこからポッカリとなくなっていたら……優しい彼女は悲しむだろう。

だから初めから送らないことにした。

別れの時、少しでも彼女が平気でいられるように。その時には、俺のことを思い出さなくて済むように。







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