で、それから彼女はよく(仕事中の)ウチに遊びに来るのだが、ひとりで来ることもあれば、友達を連れてくることもあった。妹とも来たことがあるが、その妹の印象は強烈だった。信じられないほど日焼けしていて、姉妹ふたりで並んでいたらオセロみたいだった。
で、彼女は人をつれてくることは多かったが、そのうちの一人が、剣道少女たぬぽである。
たぬぽには、男モノの袴を着せたことがある。俺たちは喜んでいたが、アノコはもしかしたら、普通に女物の格好をしたかったのではないか? と、実は今でも気になっている。
たぬぽはのちに、とある国立大学の理系学部に合格し、大学院まで進み、俺の小説の監修をのちにつとめた。ドSなんじゃないの? ってくらい作品に真顔ツッコミをもらった。100箇所どころではなかったはずだ。ときには大学院の仲間を全員駆り出して、俺の作品を鍛えてくれたのは、感謝してもしきれない。
俺はたぬぽを紹介してくれた『彼女』に、最後まで協力はしてもらわなかったが(彼女に協力を仰がない理由は前に述べた)、彼女以外の人脈はフル活用したのだ。たぬぽは、口止めだけすれば、彼女に話さないことは知っていたから。たぬぽは侍のようなやつなのだ。卑怯な俺とちがい、正道を重んじる。性格はおかげで、根本的なところでは相容れないのはわかっているし、アチラも同じものを感じているはずだ。だが、それでも俺はたぬぽを尊敬しているし、信頼もしている。
つまり、たぬぽを含め、ほかの子を含め、たぬぽを連れてきた『彼女』との出会いは、あきらかに俺を強くした。そこについてだけは、彼女と知り合うきっかけとなった、あの団体も役に立ったと言える。
じつを言うと、彼女と疎遠になるタイミングが、こののち、もう一度あった。
それは高校3年、つまり受験シーズンだ。そのまま、大学入学のころまで、俺も彼女も一切語ることはなくなる。このころの彼女の動向は、後で聞いたところしか知らない。
次に彼女からコンタクトがあったのは、約2年後の、彼女が二十歳のときだった。