15年にわたる恋心に終止符を打った。その15年の経緯を、俺の思い出づくりのために書いていく001

初めて会ったのは、俺がとある青年団グループにいたとき。その青年団には、入りたくて入ったわけではなく、さまざまなシガラミによって、しかたなく入団したのだった。

所属先は、中学生の子供たちを外国へ連れて行って国際交流をはかるというもの。

え? 子供? 今時の子供って、ヒップホップしか聞かなくて、写真撮るときには舌だして変顔するんだろ? んで名前は全員キラキラネーム。

嘘と思うかもしれないが、今も昔も先入観の強い俺は、まだ出会っていない子供たちをそう評価していた。

……で、会ってみれば、全員メタクソ賢かった。おそらく、中学生の時点で俺より賢い。
大学時代に、お師匠様との出会いがなければ、俺は彼ら彼女らには敵わなかっただろう。

ひとまず俺の偏見は小気味よくぶっこわされた。
ヒップホッパーはいなかった。

ただ、話してみて、嬉しい誤算もあった。

属性は俺に近かった。アニソン、声優、漫画、ゲーム……。ちっちゃい俺がたくさんいた(ただし、アチラはIQがすこぶる高い)。

そのグループの中に、やたらと俺に近づく子がいた。

ちょこちょこ近づき、(俺の話はまったく聞かずに)声優やらアニメやらのマシンガントークをして、歌うだけ歌い、さいごに『ばいばい、みんQちゃん』。本当にちゃん付けされていた。
この頃は、なんだろう、この小動物は……? と思っていたし、当人にも後にそれを伝えた。

ともかく、その子との出会いは、距離感のバグったコンタクトだった。

話を、国際交流にもどす。

いきなり初対面の中学生を、即座に外国へ連れて行くわけではなく、まずは子供たち同士のつながりを、ということで、何度かオリエンテーションが組まれる。

オリエンテーションの場所はどこだったか、完全に忘れていたが、書いていたら思い出した。

温泉街にある、市の共済施設。

そこで、子供たちは外国の子供との交流のために、歌を教えられる。俺は講師をやることになった。話すのは、難しいとも思わない。言えと言われれば何万人の聴衆が相手でも話せる。

それに緊張はおぼえなかったが、すでに話す内容は決められていた。『江戸しぐさ』について語れという。

そのために資料を読み、江戸時代の本を開いて、準備を完了した。小説はバリバリ書いているのだから、こんなの屁でもない……と思っていたら、大して読まれることもなく、作文もろくに作れない団長の言うとおりに書けと言われ、すべて白紙になった。

すでに初日から、この団体を退会することは決めていたから、波風立てずに、目立たずに、あたかも従順な犬のようにふるまい、俺の辞表をもっとも止めにくいタイミングで、辞表を出してやると決めていた。

そのことは、団体の誰にも──もちろん、中学生の子供たちにも言わなかった。

それから15年後の最後の日、彼女は俺に嘘つき、と告げた。

おもえば、俺は彼女に嘘をよくついていた。

『来年もまた一緒にこれやろうね!』と、この団体イベントの最後に、彼女は言い、俺は高い抑揚で、もちろんだ、と答えた。

これが最初のウソ。

俺は彼女に、彼女が傷つかないための嘘をつくより、彼女が傷付く嘘のほうを良く吐いたのだ。

20240923記す。





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