それは、ファノンが7歳のころだった。
「おはよー! お前ら今すぐ昨日読んだマンガを報告しろ」
その日の朝、小学校の教室に入ると、ファノンはそう叫んだ。
それによって、苦笑いする男の子、軽蔑の視線を向ける女の子、そしてたくさんの、その言葉に慣れて無反応な男女の顔を見れる……はずだった。
だが、この日の同級生たちの顔色は、いつもと大分、違った。
皆が、ファノンを
「……おい、どうしたんだよ……俺はエロ漫画なんて読んでないぜ……?」
ファノンはいつも遊ぶ男友達を見た。
その子は沈黙とともにファノンを見返すだけだった。
「あー……まあ漫画で何を読んだかなんて、どうでもいいんだけどな。はははっ……」
ファノンは片思いの女の子を見たが、その子は初めからファノンに背を向けて、他の女の子とひそひそ話していた。
「……なんだよ、お前ら……揃いも揃って」
ファノンは口をとがらせて、自分の席に着いた。
その日、なぜ同級生が冷たかったのか。
ファノンは放課後になって、その理由を知った。
アクアマリン通りに沿った、隣のクラスの男の子の家が、全焼したのである。
家の中にいたその男の子と、育ての親は焼け死んだが――その犯人が、ファノンということになっていたのだ。
ファノンはその男の子と二日前、殴り合いのケンカをしていた。
当時からファノンが光を思う場所に集めることができることは、セントデルタ人全員が知っていた。
出火元は外。
犯人はファノンだと誰かがうそぶいたのが、めぐりめぐって学校中の子供たちのみならず、セントデルタ中の人間が知るところとなったのである。
「エノハ様……俺、やってないよ。俺、あいつとは確かに殴りあったけど、あのあと、ちゃんと仲直りだってしたんだぜ?」
アレキサンドライトの塔の三階で、ファノンはエノハを見上げ、潔白を涙ながらに訴えた。
エノハは何も語らず、ファノンと同じように……いや、ファノン以上に悲しげな表情で、ただファノンの頭を優しくなでるのみだった――