アフリカ大陸の東に群居するセーシェル諸島の付近。
あらゆる戦火に飛び込んで、みずからの勢力を築くべく、この洋上にはプラントの
ここはボスや仲間たちの尽力と、それ以上の死力を賭して勝ち取った、城であり、家であり……故郷なのである。
雨の日のある日、ボスが長い間、そのプラントを留守にしてから、久しぶりに帰還した時のこと。
ボスはその自分の城で、仲間同士の、大きな
「どうシュた? 来いよ」
プラント
跳ね飛ばされたほうの男は、もう完全に頭に来たらしく、両手でその相手を突き飛ばし返した。
これで
大ゲンカの始まりである。
その洋上プラントの戦士達は、アメリカ以上の『人種のるつぼ』。
そもそもケンカになったきっかけとなったのは、金である。
だがその後の口論には、思想か、宗教か、文化か、信条か、人種か、地位か、はたまた女か……どれかはわからないが、そのどれかが使われたはずだ。
それらはいずれも、火を炎に変えるような激論にならざるを得ないものだった。
周囲には十数人の男女が囲っていたが、誰も本気で止めようとしないばかりか、むしろ周りから二人を煽る始末だった。
男二人が殴り、蹴り、殴られ蹴飛ばされ、
周囲もそれを高揚したテンションで歓迎する。
そのコンバットナイフを振りかざし、とどめを刺そうとしたところで――ずっとその様子を伺っていたボスが、にわかに
ボスは横から、ナイフを持った男の腕を取り、引き回したあと、ケンカ相手の男にぶつけてよろめかせ、そのまま派手にうしろに投げ飛ばした。
どちらの男も、あたかもゴム人形のように吹き飛び、さしあたっての平定は完了した……ふうに見えた。
「ヤ……ヤロォ……っ!」
だが、怒りの収まらない、殺されかけたほうの男は、腰からナイフを逆手に取り出し、いまボスに投げ飛ばされた男めがけて、復讐を果たそうとする。
と、その男の手に、にわかに、ブ厚い手が当てられた。
彼自身の、ボスの手だった。
「ボス!?」
それまで頭に血がのぼりきっていた男はやっと、ここに自分のボスがいることを悟った。
「仲間にナイフを向けリュな」
ボスはあくまでも普段通りの声音で、正面から男を見据えて語った。
しかしボスのその腕はすでに、男の握るナイフを、その掌ごと、ボス自身の左胸に向けて、その切っ先を持ち上げていた。
凄まじい腕力。男にそれを抗う力はなく、ただされるがまま、あたかも自らの手でボスの心臓にナイフを向ける
「よく見てリョ……俺達は家族だ」