「弱い力、強い力、電磁気力、それから重力……」
セントデルタから離れた、ブラジル・カラジャス鉱山工場の中、フォーハードはモニターを見ながら、とつとつと
その視線は、ファノンよりはむしろ、巨大な人型兵器、チェルノスに注がれていた。
「この宇宙を構成する、旧代末期の四元素の話ですね。それがどうされたのですか」
フォーハードと同じくパイプの
「四元素か。風流な言い方をするね。古代ギリシャでは火・水・空気・土が世界を構成すると言っていたが、それから2000年たち、科学を突き詰めたら、やっぱり4つの力がこの世の構成に欠かせなかったとわかったんだ」
「その4つの力が、あれに関係あると?」
「……もともとは同じ力だそうだが、これらをすべて関連付けた、完全な究極理論が作られる前に、俺が人類を死滅させたから、けっきょくはわからずじまいだ。その究極理論というのが、超ひも理論……つまりファノンの超弦の力につながるはずなんだがな。
まあ、それはともかく……チェルノスの奴は、あの4つの力を自在に操れるんだ。俺の次元の力や、ファノンの超弦の力の
「となるとやはり、憎しみをエネルギー源とするのですか? しかしチェルノスは機械です。わたしたち機械が、憎しみを覚えると?」
「憎しみとは、学ぶものだからな」
「旧代、南アフリカ8代目の大統領ネルソン・マンデラの言葉ですね。赤ん坊は生まれたときから人を憎みはしない。伝えられ、教えられて人を憎むことを学ぶ、ということだそうです。ですがその言葉のあとには『憎しみが学べるなら、愛も学ぶことができるはずだ』とあったはずです」
「ホロコースター最終型チェルノスには、お前らラストマンを超える運動性能を与えたが、それはオマケにすぎない。それ以上に、あいつを製造するのに時間と金を費やしたのは、感情の育成だ。あいつは憎しみを覚えたが、その過程で愛も覚えた。だから、あいつはここにじゃなく、エノハの元にいることを望んだ」
「……チェルノスは異常なほど好戦的です。それも感情の
「あいつはファノンと戦いたがるだろう。その結果は……目に見えてるがな」
フォーハードはモニターから目を離さないまま、首を小さく振った。