「……俺のことは、ろくな奴じゃないと教わったんじゃないか? セントデルタの授業では」
ゴドラハンがしたり顔で、ファノンの心内をすっぱ抜いた。
「……ああ、歴史上、最低最悪の
「まあ、完全に否定はしないさ。俺だけの理想の世界があっても、悪いとは思わんからな」
「ホントは違う、と言いたげだな」
「
「つまり、セントデルタ教科書みたいなことは主張してない、と言いたいんだな。信じる理由がないよ。俺は……俺たちセントデルタの人間はずっと、お前が悪意で世界をたばねようとしていた、と教わった」
「Aの話を先に聞いた、ゆえにあとで聞いたBの話は間違っている、と。お前の真実とは、聞いた順番だけで決まるのか?」
「む……」
「まあいいさ、俺はエノハの世界を否定する話を聞いてもらうために、お前をさらったんじゃあない。俺の
「倒せるものなら倒すよ。あいつ意地悪すぎだし。だけど、なんであいつを倒したいんだ。それにさっき、セントデルタを破壊してほしいと言ってたろ。セントデルタの破壊をするのにフォーハードは関係ないし、どっちかというと、フォーハードがセントデルタを破壊しようとしてるじゃないか。あいつに頼めばどうだ」
「あいつじゃダメだ。他のものも破壊する気でいるからな。あの男がいるかぎり、人間世界が停滞するか、地球が破滅するか、どちらかしかない」
「停滞とは、エノハ様のやってる統治のことだろ。エノハ様はそうやって理想の世界を守ろうとしてる」
「ん……そういうふうに、セントデルタでは教わっているのか?」
「いや、俺の好……知ってる人間が言ってた言葉の受け売りだ。なんだ、それも嘘だと言いたいのか」
「エノハとフォーハードは、切っても切れない結びつきがあるのさ」
ゴドラハンは湯呑みをあおってから、さらに語った。
「なぜなら――お前らが奉じるセントデルタを作ったのは、ほかならぬ、水爆の男フォーハードだからだ」