鳥のさえずりさえ、まだ寝静まる午前3時。
早朝とも深夜とも名指せるその時間に、ファノンは廃ビルの二階オフィス出口に、
支度と言うものの、そもそもファノンは
ともかく、ファノンの背後では、綿を張った木皮の布団ひとつに横たわるゴドラハンとロナリオが寝息を立てていた。
ふたりは夢見心地に、
ファノンは二人の目覚める様子がないことを確認してから、こんどこそ歩き出した。
ビルのエントランスまで抜けたにもかかわらず、心配していた警報もなく、矢が
ファノンはこの静かな別れに、ほんのりとした
古代人のようにネオンやライトで夜を昼に偽造していた時代とは違い、太陽の昇降に起床時間を合わせているセントデルタ人は、かなり視力がいい。
午前3時の空は
――ゴドラハンが初めに言ったように、迷わず帰れそうだ。
そう考えながら、ファノンはゆっくりと、セントデルタに向けて、
――クマにさえ出くわさなければ、なんとかなるな。
ファノンははやる望郷の気持ちを抑えきれず、少しばかり早足で宵闇の森を進んでいた。
だがその
ファノンの進路である森の中に、見覚えのあるアメジストの双眼の光が灯ったのである。
「……!」
あるていど、この事態を予測していたファノンは、すぐに身構えた。
例によって、その闇に浮かぶアメジストの
フォーハードの作った家電型マシン、アジンである。
安っぽい金属とプラスチックの重なり合う、ガシャンガシャンといった足音をがならせて、アジンはアルマジロを思わせる
だが以前と違い、ファノンがうろたえなかったのは、今度はちゃんと戦う手段が備わっていたからである。
「ギゴ」
機械が掛け声を発するわけはないから、これは金属の
だがまるで、それを合図にするように、100体近いアジンたちが、いっせいにファノンに走り出した。
そのアジンに向けて、ファノンは手のひらをかざすと、目の前にいるアジン四体が、一瞬のうちに、大きな静電気のひらめきを残して、消滅したのである。
「よし……できた」
ファノンは興奮ぎみに、ひとりごちた。
これこそがゴドラハンに教わった、いや、ファノン土着の力、超弦の正しい発現のしかた、だった。
ファノンの力は
いまファノンがやったのは、アジンの五体を構成する鉄とゴムと水素電池、その他もろもろ銅線やプラスチックなどを、まとめてヘリウムに変じたのである。(静電気が出たのは、ファノンの力の関わった部分とそうでない部分の境界で、半端に原子をヘリウム化されて孤立化した電子が、周囲で弾けたためのものである。)
以前、ツチグモを焼いた太陽の力とはケタ違いの確実さで、敵を仕留める技。
――これなら、勝てる!
あたかも