41.動き出す、最後の勢力

「あれじゃ、無理だな」

 ビルの二階の真っ赤なカーネリアン製の窓枠に腰を下ろし、交戦するファノンを双眼鏡で見つめるゴドラハンが、あきれ加減に嘆じた。

「おとといより、力は上がっているようです。ですが、あんなに矢継やつばやに強い力を使っている。あれだと息を止めながら全力疾走するようなもの。長くはもちません」

 そばに立つロナリオが意見を重ねた。

「あいつはフォーハードと戦うには、時期尚早じきしょうそうだよな」

「アジンはファノンを殺す勢いで襲っています。どうやらファノンの顔を、フォーハードはまだアジンに覚えさせていないようです。このままファノンがアジンたちに敗れれば、ファノンの未来は袋叩きによる失血死しか、ありません」

「フォーハードにとっても、ファノンをこのまま撲殺ぼくさつさせるわけにはいかないはずだ。だが交戦データは、すでにフォーハードに届いている頃だろう……奴も動く」

 ゴドラハンは窓枠に腰かけたまま、横のロナリオに振り向いて続けた。

「俺たちも行くぞ。アジンと出くわした以上、確実に俺たちもフォーハードに狙われる。この森の中で、すべての決着をつけてやる」

 すでに空手着に着替えているゴドラハンは、窓から離れ、一階への階段へと背をひるがえすと、ロナリオも黙って追従した。

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