45.二枚舌によって

「フォーハードめ!」

 一人、どこかの森の中にワープさせられたエノハは、怒りを声音に乗せて吐いた。

「奴め……私をワープさせて、何をたくらむ」

 フォーハードの手練手管しゅれんてくだ多岐たきにわたることを、エノハは知っている。

 そしてフォーハードはいつも、相手に意図いとがすべて見透みすかされていても、それを回避できない状況に追い込む方法にけているのだ。

 ――つまり。

「奴はファノンを使い、本格的に宇宙の破滅を始める気だ……」

 エノハは立ち尽くしたまま、苦くつぶやいた。

 フォーハードは間違いなく、エノハの見えないところで、そのための準備を始めたのである。

 それをフォーハードに突き詰めても、おそらく涼しく嘘をつくだろう。

 ――俺はお前と契約したはずだ、お前が俺との約束さえ守れば、セントデルタは守る。

 と。

 今のエノハには、それをねじ伏せるだけの手段がない。

 エノハは実質、この500年間、フォーハードによってセントデルタを人質にとられていたのである。

 それを知りながら、エノハにはもはや、どうしようもなかった。

「ファノン……すまない。お前を守りたいのに、それすらできそうにない……」

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