ここらで見える景色は、土と問わず肉と問わず岩と問わず、生物も無生物も、ほとんどが同じように、一瞬にして火にくるまれたのである。
すべては、ロナリオの押した、ダイナマイト起爆ボタンを
その、にわかに夕日のような明かりに染まった森を、上空からフォーハードと、その手にぶらさがる形で、エノハが見下ろしていた。
「してやられた。さすがゴドラハンだ」
「用意
先ほどまでフォーハードに置いてけぼりを食らっていたエノハが、皮肉まじりにつぶやいた。
「助けにきてやったんだ。そこは感謝の言葉だろう?」
フォーハードは落下を続けながら、地面を観察した。
地下は坑道だったのか空洞だったのかはフォーハードにはわからないが、爆発とともに岩盤は森ごと沈下し、どこがどこだったか、見分けがつかなくなっていた。
「周囲2キロ四方ってところか。ゴドラハンのやつ、TNT爆薬を何千キログラムも埋めていたようだ。加えて地下を掘って穴だらけにしていたから、盛大に崩れたんだな」
フォーハードはそこまで述べたところで、わずかに沈黙をはじめた。
そのとたん、エノハの見る景色がにわかに、揺らぎ始める。
そう思ったのもつかのま、フォーハードとエノハは、先ほどまで自分たちが見下ろしていた、ゴドラハンが掘った坑道の中へと転移していた。
フォーハードが、次元ワープの術を使ったのである。
「ゴドラハンの奴……まさかこれで俺たちを片付けられる、と考えているとは思えん」
フォーハードがひとりごちながら、ファノンによって曇天の中に
「奴は生きている。あまり観察する時間はなかったが、奴の周辺だけ爆薬が少なかったふうに思う。どこに、どの程度の爆薬が仕掛けてあるかは、すべて奴の頭の中だけ、というわけだ。せっかく中国から持ってきたアジンを、ぜんぶ壊してくれたよ」
「……ならば追わぬほうがいい。この坑道もゴドラハンの罠だらけ、ということだ」
エノハがフォーハードの手首から手を離すと、不機嫌に助言した。
「そうだな。いくら超能力があろうと、俺は不死身じゃあない。ここらで逃げるとしよう……それに、やりたかった段取りはつけたしな」
「やはり、ファノンを目覚めさせたか。フォーハード……私があの場にいない間に、仕込みをしたことはわかっている。ハッキリ言えばどうだ。もはや、セントデルタを守る気がない、と」
「いいや? お前が約束さえ守れば、俺はこれからもセントデルタの守護神になる気だぜ」
フォーハードは真顔で、ウソをついた。