ひびのおしえ 二編

みんQ注:当時のみんQが、翻訳をめんどうに感じたらしく、ここのみ原文の写しになります。

 ひびのおしえ 二へん

 とうざい、とうざい。ひびのおしえ二へんのはじまり。おさだめのおきては6かじょう、みみをさらえてこれをきき、はらにおさめてわするべからず。

    だい一

 てんとうさまをおそれ、これをうやまい、そのこころにしたがうべし。ただしここにいうてんとうさまとは、にちりんのことにはあらず、西洋のことばにてごっどといい、にほんのことばにほんやくすれば、ぞうぶつしゃというものなり。

    だい二

 ちちははをうやまい、これをしたしみ、そのこころにしたがうべし。

    だい三

 ひとをころすべからず。けものをむごくとりあつかい、むしけらをむえきにころすべからず。

    だい四

 ぬすみすべからず。ひとのおとしたるものをひらうべからず。

    だい五

 いつわるべからず。うそをついてひとのじゃまをすべからず。

    だい六

 むさぼるべからず。むやみによくばりてひとのものをほしがるべからず。

    ○

 てんとうさまのおきてともうすは、むかしむかしそのむかしより、きょうのいまにいたるまで、すこしもまちがいあることなし。むぎをまけばむぎがはえ、まめをまけばまめがはえ、きのふねはうき、つちのふねはしずむ。きまりきったることなれば、ひともこれをふしぎとおもわず。されば、いま、よきことをすれば、よきことがむくい、わろきことをすれば、わろきことがむくうも、これまたてんとうさまのおきてにて、むかしのよから、まちがいしことなし。

 しかるに、てんとうしらずのばかものが、めのまえのよくにまようて、てんのおきてをおそれず、あくじをはたらいて、さいわいをもとめんとするものあり。

 こは、つちのふねにのりて、うみをわたらんとするにおなじ。こんなことで、てんとうさまがだまさるべきや。あくじをまけばあくじがはえるぞ。かべにみみあり、ふすまにめあり。あくじをなして、つみをのがれんとするなかれ。

    ○

 けさのひのでより、あすのあさのひのでまでを、いちにちとし、三十にちあわせてひとつきとす。

 だいのつきは三十にち、しょうのつきは二十九にちなれども、まずこれを三十にちづつとすれば、一ねんは十二つきにて、ひかず三百六十にちなり。十ねんは三千六百にち、五十ねんは一萬八千にちなり。

 おまえたちもいまから三百六十ねると、またひとつとしをとり、おしょうがつになりて、おもしろきこともあらん、されどもだんだんおおくねて、一萬八千ばかりもねると、五十六、七のおじいさんになりて、あまりおもしろくもあるまじ。

 一にちにてもゆだんをせずに、がくもんすべきものなり。

    ○

 日本にては夜昼(よるひる)を十二にわけて十二時とさだむれども、西洋にては二十四にわけ、夜昼あわせて二十四(とき)(ママ*)定む。ゆえに西洋の一時(ひととき)は日本の半時(はんとき)なり。

 そのわりあい()のごとし。

 日本の時   西洋の時

 六時(むつ)     六時(ろくじ)

 六半(むつはん)     七時(しちじ)

 五時(いつつ)     八時(はちじ)

 五半(いつはん)     九時(くじ)

 四時(よつ)     十時(じゅうじ)

 四半     十一時

 九時     十二時

 九半     一時

 八時     二時

 八半     三時

 七時     四時

 七半     五時

 このようにかぞえて、またもとの六時(むつ)にかえり、じゅんじゅんにかぞうるなり。

    ○

 西洋の一時(いちじ)を六十にわけて一分時(いちぶんじ)という。

 あるいは西洋のことばにて一「ミニウト」ともいう。一分時をまた六十にわけて一「セカンド」という。一「セカンド」は、たいてい、(みゃく)のひとつ、うごくくらいの、あいだなり。

 一日(いちにち)は西洋の十二時(じゅうにとき)なるゆえ、「ミニウト」にすれば七百二十「ミニウト」なり。「セカンド」にすれば四萬三千二百「セカンド」なり。

    ○

 たたみの(なが)さは六尺(ろくしゃく)、かもいの(たか)さは五尺七寸(ごしゃくしちすん)なり。一尺(いっしゃく)(とお)にわけたるを一寸(いっすん)といい、一寸を十にわけて一分(いちぶ)といい、一分を十にわけて一厘(いちりん)という。

 ゆえに一尺は千厘なり、百分なり、十寸なり。

○六尺を一間といい、六十間を一町といい、三十六町を一里という。ゆえに一町は三百六十尺なり。一里は一萬二千九百六十尺なり。間にすれば二千百六十間なり。

○人のあるく一歩を二尺とすれば、一里は六千四百八十歩なり。ゆえに一日に十里の路をあるく人は、六萬四千八百あしあるくなり。

 右は金尺という尺にて、家をたて箱を作るなど、すべて物の長さをはかる寸法なり。反物の長さをはかるには、くじら尺というものさしあり。呉服屋仕立屋にて用ゆ。くじら尺は金尺よりも長く、くじら尺の八寸と金尺の一尺は同じ長さなり。

    ○

 一坪(ひとつぼ)とはたてよこ一間(いっけん)づつの(ひろ)さにて、(すなわ)ちたたみ二枚(にまい)じきのことなり。田地(でんち)(ひろ)さを勘定(かんじょう)するには、百姓(ひゃくしょう)言葉(ことば)にて、この一坪のことを一歩(いちぶ)という。三十歩(さんじゅうぶ)一畝(ひとせ)といい、十畝(とせ)
一反(いったん)といい、十反(じったん)一町(いっちょう)という。ゆえに一町は三千坪(さんぜんつぼ)なり。一反(いったん)三百坪(さんびゃくつぼ)なり。一畝は三十坪なり。一歩は一坪と同じことなり。

 (たと)えばこの(はたけ)四反七畝十五歩(したんななせじゅうごぶ)ありといえば、(すなわ)ちその(はたけ)(ひろ)さは千四百二十五坪あるということになり、千畳(せんじょう)じきの座舗(ざしき)は五百坪なるゆえ、(はたけ)勘定(かんじょう)にすれば一反三畝二十歩(いったんみせにじゅうぶ)なり。