理想の世界で触れられんかったこと:ビッグバンについて

まもなく終わる理想の世界だけど、どうしても書きたかったことなのに、書けなかったことを、ここに残しとこう。かなり好きなエピソードなんよ。

ビッグバンは物質が爆発で散らばった現象のことではない……って話だけど、これをものっそい、わかりやすく書いてくれてる本2冊を紹介したい。
すごいよな、今俺らがみてる宇宙(半径138億光年)は、たかだか10-24秒で広がったって話。書き換えると、ビッグバン開始から0.000000000000000000000001秒で、すでに138億光年ぶんは空間ができてた、とかいう話。
つまり、それだけ空間の広がり方は光よりも速いってこと。
あらゆる物質は光の速度を超えることはできないけれど、空間は物質じゃないからおkの論理。

ビッグバンについてはだれもが耳にしているはずだ。一三八億年ほど前、宇宙のすべては空間のなかで大きさのない一点に圧縮されていて、ビッグバンによって物質が四方八方に爆発して散った、といったものではなかろうか?

間違いだ。

ここに最初の──そして最大の──誤解がある。ビッグバンは空間のなかの爆発ではない。空間そのものの爆発なのだ。少なくとも、そのほうがはるかに表現が優れている。たいていの人は、ビッグバンを巨大な花火のショーとして思い描く。ある一点で爆発してから、物質を空間の四方八方へ飛ばすのだと。だが、ビッグバンを花火のように考えているのに気づいたら、その考えをやめよう。それは完全に間違ったイメージだ。
『時空のさざなみ 重力波天文学の夜明け』ホヴァート・シリング:著 マーティン・リース:序文 斉藤隆央:訳 化学同人 20171226 P178

 実際のインフレーションでは、宇宙の距離のスケールはインフレーション開始時の宇宙年齢程度の時間で倍になる。これは、もしインフレーションが宇宙誕生から10-38秒程度で始まったなら、原子核の大きさ程度の領域(原子核のサイズは原子の10万分の1くらい)が現在の観測できる宇宙全体の大きさ(約138億光年内の空間)に広がるまで10-36秒程しか掛からなかったことを意味する。インフレーションがもっと後、宇宙年齢10-26秒程度で始まったとしても、原子核の大きさ程度の領域が現在我々が認識できる全宇宙の大きさにまで広がるのに要した時間はたった10-24秒程である。(『マルチバース宇宙論入門 私たちはなぜ〈この宇宙〉にいるのか』著:野村泰紀 星海社新書 20170725 p44)


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