初めて会ったのは、俺がとある青年団グループにいたとき。その青年団には、入りたくて入ったわけではなく、さまざまなシガラミによって、だった。
所属先は、中学生の子供たちを外国へ連れて行って国際交流をはかるというもの。
え? 子供? 今時の子供って、ヒップホップしか聞かなくて、写真撮るときには舌だして変顔するんだろ? んで名前は全員キラキラネーム。
嘘と思うかもしれないが、今も昔も先入観の強い俺は、まだ出会っていない子供たちをそう評価していた。
……で、会ってみれば、全員メタクソ賢いんでやんの。
大学時代に奇跡のようなお師匠様との出会いがなければ、俺は彼ら彼女らには敵わなかった。
ひとまず俺の偏見は小気味よくぶっこわされた。
ヒップホッパーはいなかった。
ただ、話してみて、嬉しい誤算もあった。
属性は俺に近かった。アニソン、声優、漫画、ゲーム……。ちっちゃい俺がたくさんいた(ただし、アチラはIQがすこぶる高い)。
そのグループの中に、やたらと俺に近づく子がいた。
ちょこちょこ近づき、(俺の話はまったく聞かずに)声優やらアニメやらのマシンガントークをして、歌うだけ歌い、さいごに『ばいばい、みんQちゃん』。本当にちゃん付けされていた。
この頃は『なんだろう、この小動物は……?』と思っていたし、当人にも後にそれを伝えた。
ともかく、その子との出会いは、距離感のバグった接触として始まった。
話を、国際交流にもどす。
いきなり初対面の中学生を、即座に外国へ連れて行くわけではなく、まずは子供たち同士のつながりを、ということで、何度かオリエンテーションが組まれる。
オリエンテーションの場所はどこだったか、完全に忘れていたが、書いていたら思い出した。
温泉街にある、市の共済施設。
そこで、子供たちは外国の子供との交流のために、歌を教えられる。俺は講師をやることになった。話すのは、なんと言うことはない。それに緊張はなかったが、すでに話す内容は決まめられていた。『江戸しぐさ』について語れという。
そのために資料を読み、江戸時代の本を開いて、準備を完了した。小説はバリバリ書いているのだから、こんなの屁でもない……と思っていたら、大して読まれることもなく、団長の言うとおりに書けと言われ、すべて白紙になった。
イヤあんた、原稿用紙10枚でも自発的に書いたことある? 何か論文を書いたことは?
などと言えるわけもなく、吹けば飛ぶ毛虫のごときみんQは命令に服する。
すでに初日から、この団体は退会することを決めていたから、波風立てずに、目立たずに、あたかも従順な犬のようにふるまい、俺の辞表をもっとも止めにくいタイミングで、辞表を出すと決めていた。
そのことは、団体の誰にも──もちろん、中学生の子供たちにも、もちろん彼女にも言わなかった。
彼女は、その団体イベントの終わり、『みんQちゃん、また来年もここで会おうね』と言ってくれた。俺はそれにズキリとした罪悪感を覚えながら、もちろんだ、と答えた。
これが、彼女に初めてついた嘘。
そこから15年後、別れる間際、彼女は俺に『嘘つき』と語った。その前にもやはり、彼女に嘘をついたからだ。
おもえば俺は彼女に、彼女が傷つかない嘘よりも、傷付く嘘を多く吐いてきたのだ。
気が向けば続きを書くけれど、おそらくそれはブログには書かない。本HPの小説の中にでも、俺の思い出の箱として収めたい。思い出と宝物は、同じものだから。2024年9月23日しるす。→追記:やっぱり書いた。
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